男は「刷り込み」で結婚しているだけかもしれない ゲスト 斎藤和弘


とにかく地元の山形に戻りたくなくて、結婚をした斎藤和弘さん。
形を作るために必死で考えたその策とは……。 とてもユニークな結婚までのプロセス。


田舎へ強制送還されるのが嫌で結婚しました(笑)

斎藤和弘
(Kazuhiro Saito)
55年生まれ。山形県出身。東京大学卒。 96年『ブルータス』編集長に就任。98年『カーサ・ブルータス』編集長兼務。01年コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパン代表取締役社長就任。「GQ JAPAN」、『VOGUE NIPPON』編集長も兼任。

結婚を決めた理由は田舎への強制送還を逃れるため!?

野尻: 斎藤さんって、生活観がまるでなくって結婚しているように見えませんが……。
斎藤

結婚してますよ。えーっと、確かもう今年銀婚式ですよ。

野尻: ってことは、結婚25年? エーッ。
斎藤 多分ね。娘がもう今年24歳ですからね。
野尻: おいくつですか? 結婚なさったのは?
斎藤 25歳のときですね。
野尻: 若い!
斎藤 いろんな理由がありまして……。
僕は山形の農家の長男なんですが、子供のときから田舎の暮らしが嫌で嫌でしょうがなくって。で、やっと大学入学のとき東京に出てきたわけ。ところが、大学4年になったら、田舎の爺さんが「就職先があるから帰って来い」って言うんですよ。当時は、オイルショックで就職氷河期なのに、「高校の先生と県庁の職員なら大丈夫だから」って。「待てよ、普通は試験があるんじゃない?」って言ったら、「あっ、それはもういいから。大丈夫だから」と。
野尻: ハハハ。試験を受けなくてもいいと。
斎藤 どうやら、爺さんが根回しして、試験を免除させたらしい(笑)。これは、マズい。強制送還されると、慌てて「東京で結婚するから」と言い逃れました。で、当時付き合っていた妻と結婚することにしたわけです。
   
結婚するために、残業で貯金「形」を作るために必死だった
斎藤 ところが、結婚となると妻の家にも納得してもらわなきゃいけない。だから、まずは「お金を貯めなきゃ」と慌てて就職先を探した。で、決めたのが出版社。理由は、給料が一番高かったから。当時、出版社の給料は、都銀の初年度年収が250万円もない時代に、400万円近くあったんです。
野尻: そうだったんですか。カリスマ編集長として名高い斎藤さんが、この仕事に就いた動機は、お金だったのか。
斎藤 そう。別に出版社に入りたかったわけじゃないの。
野尻: 結局、お金は貯まったんですか?
斎藤 貯まりました。1年間残業ばかりして。収入のほとんどを貯めて、結婚式から、新婚旅行、新居の費用まで全部賄いました。
野尻: ちゃんと結婚式もなさったんですね。
斎藤 向こうの親を安心させなきゃいけないですから。なにもかも完璧にやりましたよ。当時出来たばかりの、京王プラザホテルで結婚式をやり、新婚旅行はロス、サンフランシスコ、ハワイを回り、杉並区久我山に賃貸マンション借りてと、形を作ったんです。
野尻: スキがない……。で、斎藤さんのご両親も、息子が田舎に帰ってくるのを諦めたわけですね。
斎藤 そう。作戦は大成功(笑)。で、翌年には子供が生まれて。そのくらいまでは、結構まっとうな生活をしていたんです。でも20代後半くらいかな? 編集者という仕事のため、なんとなく仕事がヤクザになってきて、それと同時に、生活も、家にも帰らなかったりとなんとなくヤクザっぽくなってきた(笑)。
野尻: でも、お子さんは可愛いでしょ?
斎藤 育児はちゃんとしてました。毎晩会社から帰ったら子供の相手をして、土日はずっと井の頭公園で子供を遊ばせて。でも、娘にもはやそんな記憶はなく……。
野尻: 24歳ですもんね。もう大人だもん。
斎藤 大人、大人。だから、まったく口利かないしね(笑)。僕のことも「コイツは普段、いったい何をしてるんだろう」って思っているでしょうね。
野尻: そんなことないでしょう。ステイタスのある仕事をされていて。
斎藤 そんなこと、思っていませんよ。あのですね、雑誌の編集者には2タイプあるんです。1つは、プライベートを充実させるタイプ。家のインテリアに凝ったり、ガーデニングしちゃったり、みんなで旅行したり、ちゃんと家族している人。もう1つは、家は寝に帰るだけってタイプ。私は後者のタイプだったので、まっ、普通の家族じゃないわけです(笑)。
 
   
 
“スーパー忙しい人”が家庭をうまくやるっていうのは大変ですよね
男と女のどちらが、より人生の決断をしているかっていうと、圧倒的に女性だと思っているんです

人生の決断をするのが女決断なしで動かされているのが男です

野尻: 仕事人間そのものだ。
斎藤 僕はね、趣味イコール仕事の人間なんです。編集者の仕事は、企画を考えることなので、24時間、企画を考えている。
 
野尻: そういう、“スーパー忙しい人”が家庭をうまくやるっていうのは大変ですよね。でも、20年以上続いているわけでしょ?
 
斎藤 うーん。僕にとって結婚は、不自由さを感じるものです。でも、なぜ続いているかというと、責任。勝手な思い込みの「責任」なんだけど。
 
野尻: それってどういうことですか?

   
斎藤 僕は、男と女のどちらが、より人生の決断をしているかっていうと、圧倒的に女性だと思っているんです。男は、決断しているように見えて実はしていない。決断ではなく、「こうしなくてはいけない」と世間に刷り込まれているだけなの。例えば、就職はしなくちゃいけないものだからする、とかね。でも、女性は違う。大学に行くのも、結婚するのも、退職するのも、すべて自分の決断。男は、自分の意志で決断していないのに決断した状態になってしまっている。ある意味で「刷り込み」によって、動かされているところが、問題なんですよ。
野尻: でも、そう言う斎藤さんだって新婚当初は、「幸せ~」って感覚を味わったんじゃないですか?
斎藤 ないですね(キッパリ)。僕は多分、自分が一番好きなんですよ。これが問題、自分でも参ってる(笑)。でも、もうどうにもならないです。よく、親や先生は「人のことを考えなさい」とか、「思いやりの心を持ちなさい」っていうでしょ? でもね、僕は仕事中、人のことばかり考えているんです。その分、プライベートでは、一人になりたくなるんです。
野尻: 正直な人だな(笑)。でも、それが男の本音かもしれない。突き詰めれば僕だって、自分が一番好きだしな。
斎藤 自分が好きという人は、なかなか結婚できないと思うんですよねえ。
野尻: 僕、影響受けやすいほうだから、「結婚に向いてないタイプかも」なんて気分になっちゃった。
text : Rumi Sato

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photo: Shunsei Takei
  place: SHOTO GALLERY

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  野尻佳孝 (Yoshitaka Nojiri)
株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役社長
72年東京生まれ。大学卒業後、住友海上(当時)に入社。友達の結婚式に招かれた時、「自分の仕切る二次会の方が、断然面白い。だったら……」と、98年10月に同社を設立し、ブライダル業界に参入。たった1畳のオフィスからスタートし、ハウスウエディング市場を作り上げた


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