妻へ宛てたラブレター君より長く生きたい ゲスト 藤代冥砂


妻のさりげない仕草、表情、視線……ふとした瞬間に立ち現れるいとおしさ。その積み重ねが、愛を育むということなのかもしれないと、写真集『もう、家に帰ろう』は教えてくれる。妻・田辺あゆみさんとの5年の日々はいつも新鮮だったとい う藤代冥砂さんに、結婚について聞いた。


妻を置き去りにするのは可哀想だから今は長生きしたい

藤代冥砂
(Meisa Fujishiro)
67年生まれ。千葉県出身。明治大学商学部卒。90年にフリーカメラマンとして独立。95年に2年間、世界一周の旅に出る。『週刊朝日』の表紙を始め、雑誌、広告、写真集などで活躍する売れっ子カメラマン。妻である田辺あゆみさんとの歳月をまとめた写真集『もう、家に帰ろう』他、多数。

始まりは「友達」の一人から屈託のない笑顔に惹かれ「恋人」に

野尻:

藤代さんは、トップモデルの田辺あゆみさんと結婚されて、最近男の子もお生まれになった。そんなお二人の新婚生活を撮りおろした写真集『もう、家に帰ろう』(ロッキング・オン刊)、とっても良かったです。でも、本音を言えばズルイって感じ(笑)。写真で自分の気持ちを伝えられるなんて羨まし過ぎです。

藤代

いやいや(照れ笑いして)、自分からしたら写真は唯一の武器だから。まぁ確かにこの本は、奥さんに対するラブレターではありますが、日々いろいろな女性と出会い、写真を撮って、ある種の擬似恋愛することを生業としているので、それに対する罪滅ぼしというか、「ゴメンね。でも本当は君が一番好きだよ」という“反省文”でもあるというか……(苦笑)。だから、もしかしたら過剰な愛の言葉を書いちゃったかもしれない

野尻: 「君より長く生きたい」なんて、女性にとっては最高の愛の言葉ですよね。
藤代 彼女を一人置き去りにして、自分と過ごした日々の面影を残すのは可哀想だなと。嫌な役回りは、自分がやるという気分だった(照れ笑い)。でも実際は、彼女は僕より11歳も年下だから、確率的に言うと、自分が先に逝く可能性のほうがどう考えても高いですよね。だから最近は、毎日、食事に気を付けたり、運動をしたりとジジイのような健康生活を送っていますよ。
   
男には「彼女になって欲しいグループ」と「お友達グループ」がある
野尻: 僕も写真を撮るの、好きなんです。特に恋人がいるときは、彼女ばかり撮っている。
藤代 しかし、野尻さんも僕も、好きな人を写真に撮りたいっていう欲求は何なんでしょうね?
ビデオカメラはあまり回しませんよね。やっぱり、幸せな瞬間を止めたいんでしょうかね? ストップウォッチみたいに。
野尻: 「止めたい」っていう思いは、あるかもしれない。
藤代 写真って二人が楽しく過ごした証拠なんですよね。だって、喧嘩したときに写真を撮る人なんていないでしょ?でも僕の場合、ちょっとそれが極端なんです。彼女とどんな綺麗な景色を見たって、カメラがないとちっとも楽しくない性質なんです。キレイだなと思った瞬間に、即カメラを構える。だから、家の各部屋にカメラを常備しているくらい。
野尻: なんでも、自分の結婚式の最中も写真を撮られていたそうで。あれはビックリ。だって、牧師さんの前で結婚の誓いをしている最中に、新郎自らパシャパシャ写真を撮るんでしょ?
藤代 変な新郎ですよね(笑)。牧師さんも、さすがに呆れていましたね。でも、「カメラは自分の一部だから」なんて言って許可してもらいましたけど。
野尻: 挙式中に新婦を撮るベストポジションって、新郎の場所なんです。新郎から見る新婦が一番キレイだから。僕も自分の挙式のときに、カメラを持ち込みたいなって思いましたよ。
 
藤代 当事者なんだけど、当事者じゃないみたいな不思議な感覚でした。
 
野尻: 自分の結婚式でも写真を撮りまくったことで、結果として『これから、もっとカメラを頑張っていこう」と思われたとか。その気持ち、なんとなく分かります。
 
藤代 結婚式って新たなるステージへのセレモニーですよね。その場にカメラを持ち込むってことは、「俺は一生カメラと共にやっていくぞ」と腹を括ったというか。決意表明みたいな感じですね。
   
野尻: カメラと3人で結婚したみたい(笑)。
 
藤代 そうかも。奥さんも、おそらく受け入れてくれたんだと思います。なんて言って、実は「なんなの、その黒いカタマリは」なんて思ってたりして(笑)。
 
恋愛すると恋人の写真を撮りたくなる幸せな「今」を止めたいからかな
他の女性と違うなそれが妻にピンと来た瞬間でした

男には「彼女になって欲しいグループ」と「お友達グループ」がある

野尻: ところで、藤代さんはカメラマンとして、女優、タレントなど綺麗な女性との出会いがたくさんあると思います。その中で、なぜ奥さんと結婚したいって思われたんですか? 一目惚れですか?
藤代 彼女とは、カメラマンとモデルっていう間柄で出会ったのですが、最初はそうでもなかったんですよね。それまでと違って、出会った瞬間に付き合おうという瞬発力はなかった。もちろん、「いいな」とは思いましたけど、同時にいいなと思う人が何人かいたので(笑)。そういうのって、あるでしょ?
 
野尻: ありますよね。
 
藤代 男には、「彼女になって欲しいグループ」と「お友達グループ」がある。
 
野尻: 「彼女になって欲しいグループ」に、会ったこともない憧れの人も入れたら、それこそ膨大な数に(笑)。

   
藤代 世の中の半分くらいはいくんじゃない?
野尻: でも、「彼女になって欲しいグループ」の一人だった田辺あゆみさんが、恋人になり、妻になり、ついには母親になった。キッカケって何だったんでしょう。
藤代 キッカケねぇ。ピーンときた瞬間は覚えているんですが。彼女と僕を含めた仲間の男3人、女3人でタイ旅行に行ったときのことです。実は僕、“夜の遊び”が好きで、仲間から抜け出して地元のタクシーの運転手に「どこかいいところ、ない?」と交渉をしていたんです。そうしたら、彼女がニコニコしながらやってきて、「なになに? 女の子? 今日行くの?」なんて言ってきたんです。
野尻: 面白い!
藤代 普通だったら、白い目で見るだろうに、彼女はニコニコ笑っている。その瞬間の佇まいや言い方に、「他の人と違う。この人、なんだかすごくいいな」と。
野尻: じゃあ、その日は夜の遊びに行かなかったんだ。
藤代 それが、行ったんです(笑)。「夜のパトロールだよ」なんて言い訳しながら。
text : Rumi Sato

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photo: Shunsei Takei
  place: SHOTO GALLERY

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  野尻佳孝 (Yoshitaka Nojiri)
株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役社長
72年東京生まれ。大学卒業後、住友海上(当時)に入社。友達の結婚式に招かれた時、「自分の仕切る二次会の方が、断然面白い。だったら……」と、98年10月に同社を設立し、ブライダル業界に参入。たった1畳のオフィスからスタートし、ハウスウエディング市場を作り上げた


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