出会い、恋愛、結婚…男女の仲は、巡り合わせとタイミング ゲスト 行定勲 監督


たくさんの結婚式を手がけてきた結婚式屋の社長・野尻佳孝。33歳、独身である。その理由は……「好きな人には超シャイで、恋愛下手」(本人申告)なのだった。そこで、「愛について、この人に聞きたい」と、映画監督の行定勲さんをお招きした。「恋愛は、男女の間でたまたま化学反応が生じた結果だ」と、語ってくれた。


愛情の深さは思い出の数に比例する

行定:

僕はね、自分がダメダメだから、強い女性が好きなんですよ。誉めてくれる人よりは、「ここがよくなかった」と言ってくれる人がいい。もちろん、誉めてもらうと気持ちはいいけど、それだけじゃあダメで。批判がね、人を成長させてくれると思っているから。でも特別、女性の好みがあるわけじゃない。人間関係は常に1対1だと思っているし、その人のよさを見つければ好きになる。女性が100人いたら全員、対象になりますね。意外な人が長続きしたりするし。

野尻:

100人いたら全員対象? それはすごい。

行定:

ただ、一途にひとりだけを思ったりはしないかな。広くいろいろな人と出会って、結婚した人もいるわけだし、短い期間のつきあいだった人もいる。どういう関係になるかは、人と人とが出会った後の“結果”だと、思うんですよね。

野尻:

行定さんにとって、女友達と恋人とはどう違うんですか?


   
行定:

実は、あまり違いはない。出会いって、巡り合わせとタイミングだから、どこでどうなるかわからない。1対1の人間関係の延長線上に、友情も恋愛もあるんだと思う。その関係にたまたま化学反応が起こった形が恋愛だから。

野尻:

「運命の出会い」とかって、ないんですかね。

行定: 出会い頭の瞬間に「運命の出会い」があるわけじゃなく、何年、何十年という時間を共に過ごした結果、「この人との出会いは必然だった」と思うだけなんじゃないかな。愛情は思い出の数だ、と言った女性がいるんですよ
野尻: どういう意味ですか?
行定: 以前、バイク事故で友人が死んだんです。そいつには同棲している彼女がいた。彼女は彼を、この世でいちばん大切な人だと思って、心から愛して一緒に住んでいたんです。お通夜の席でその彼女が僕のところへ来て、「私はもう涙が涸れてしまった。だけど、彼のお父さんとお母さんはいまだに泣き続けている。愛情は思い出の数に比例するのかもしれない」って言ったんですよ。その時、人と人との絆や愛の深さって、人生の終わりの局面でわかるものなのかもしれないと、なぜか実感できた。
野尻: なんだかせつない話ですね。
行定: 恋愛における男女の愛情なんて、刹那刹那の関係、いろんな断片の繋がりでしかないのかもしれないと、常々思っているんですよ。
 
 
誉めてくれる人よりは「ここがよくなかった」と指摘してくれる人がいい
行定 勲 (Isao Yukisada)
68年生まれ。熊本県出身。『OPEN HOUSE』で監督デビュー。代表作に『GO』『世界の中心で、愛をさけぶ』『北の零年』など。 今、日本映画界で最も注目を集める。行定監督作品の女性たちは、みな、一本の映画の中で強く凛とした女へと脱皮していく。女は強いもの、男はダメなものとの一貫した視点で、男と女の関係を描き続けている
高校生の頃、家の電話の前で「何を話そう」と一日にらめっこしてた
“純愛”なんて、ない 欲情しなければ、恋愛は成立しないから
野尻:

行定さんの映画の中に、「純愛」が出てくることが多いですよね。純愛がブームになって、みんな魂の結びつきみたいなものに憧れてるところがある。

行定:

情報がたくさんありすぎて、恋愛とは相手を好きになることという当たり前の本質を見なくなっているんでしょう。イベントを楽しむために、相手がいなければいけないとか、今や恋さえも、ただ時間を消費するためのものになっている気がしてるんです。映画の力では、その壁はなかなか崩せませんね。

若い人たちの恋愛周期って、すごく早くなっている。「ものすごく好きになった人がいる」と言っていながら、1カ月後に「どうなった?」と聞くと、「別れました、ダメでした。でも今、次に好きな人がいる」と。そういうのって、どうなのかなと僕は思うけど。本当の恋愛をしていないんですよね。

野尻:

じゃあ、『春の雪』で描かれているのは純愛じゃないんですか。

行定:

違いますね。ただ、最後に主人公・清顕が死ぬとき、欲を越えて輪廻を信じようとした。生まれ変わって、必ずまた聡子に会えるはずだと。禁断の愛に踏み込んだけど、最後、死ぬときの思いは純粋だった。そこで初めて純愛といえる状態になったんだと思いますね。


   

好きだから、何もしなくても一緒にいられる これってすごく大事なこと

行定:

今、普通の恋愛さえできない――つまり人を本気で好きになるってことができない人、たくさんいる気がするんです。仕事人間の僕が、人のこと言えないけど。

野尻:

僕が高校生の頃なんて、携帯電話もメールもなくて、家の電話の前で「相手の両親が出たらどうしよう。本人が出たら何を話そう」と一日中にらめっこして夜になったり、好きな女の子の家の前にずーっと立っていて、帰宅したお父さんに「君は何者だね」と尋問されたり(笑)。そんな風景が普通だった。


行定:

相手を好きだから、二人で何もしないでも一緒にいられる。たとえばDVDを観ていたら、彼女が寝ちゃって毛布をかけてあげた。そんななにげない日常は、時間の消費ではなく、確実に何かが残っていく。二人の関係が、思い出が、ひとつひとつ積み重なっていくというか。

野尻: う~ん、なんかいいなあ。僕にとって恋人とは、唯一格好悪い自分を見せられる人。日常のなにげないシーンの中で、何かを積み重ねていきながら、お互いがかけがえのない存在になっていけたら、理想だな。

   
行定:

恋愛も結婚も、積み重ねですよ。

野尻: 破滅に向かう恋って、どうなんでしょうね。僕の知り合いで、ひたすら破滅に向かって突き進むような恋愛をしている人がいる。
行定:

それは人生経験を積んで、ある意味で自分に余裕があるんじゃないですか? 満たされた日常があって、でも本人は満たされていないと思い込んでいる。常識でとどめられない破滅型の恋愛というのは、実は非常に贅沢なんだと思います。

text : Sanae Kameyama 次回へ >>
photo: Kaoru Iwatani
  place: SHOTO GALLERY
若い人たちの恋愛周期ってすごく早くなってる

『春の雪』
大正初期の貴族社会を舞台に、侯爵家の子息・清顕と伯爵家の令嬢・聡子の愛を描く。偽り、すれ違い、そして命がけの密会――究極の恋愛物語だ。こだわりの美術、セット、衣装とカメラワークが奏でる映像美も見もの。美輪明宏氏らも賛辞を寄せる話題作。全国東宝洋画系にて公開
春の雪
(C)2005「春の雪」製作委員会

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  野尻佳孝 (Yoshitaka Nojiri)
株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役社長
72年東京生まれ。大学卒業後、住友海上(当時)に入社。友達の結婚式に招かれた時、「自分の仕切る二次会の方が、断然面白い。だったら……」と、98年10月に同社を設立し、ブライダル業界に参入。たった1畳のオフィスからスタートし、ハウスウエディング市場を作り上げた


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