『ゼクシィ』を開いて、直樹と“第一回式場選び会議”をやった。

私が夢にまで見た至福の時間に、直樹は足の爪を切りながら、
うわの空で聞いている。
「足の爪がどんなに伸びたって、間に合わないことはないけど、
結婚式場は、早く、決めないと何も進まないだしょ」
あまりの怒りに、思わず、語尾が“だしょ”になってしまった。
「やっぱり、ホテルが無難じゃないの?」
「無難って何よ?」
「冒険したいの?気球に乗ってとか、スカイダイビングしながらとか、
競馬場で馬車に乗ってとか・・・」
頭に来たので、直樹のコーヒーに、『おばあちゃんのぽたぽた焼』を
入れてやった。
誰が、気球に乗ったり、スカイダイビングしたり、馬車に乗ったりしたいものか!
いつか、子供に、私たちの結婚写真を見せてとせがまれた時、
そんなこっぱずかしい思い込みの姿を見せられるか?
結婚式は、一生に一度なのだよ。
少なくとも、今の段階ではそう思ってる。
ハウスウェディングって、どうなのよ?
ホームパーティーが似合わない人種だからね、日本人は・・・。
プール付きの邸宅ってのもねえ・・・。
一歩間違えると、逆に貧乏くさいし・・・。
やっぱり、ホテルかな。
何しろ、この日のために、私は守銭奴になって来たのだ。
金ならある。
と言っても、300万ちょっとだけど・・・。
直樹は、57万しか貯金がないとほざいている。
この男は、私の財産目当てか?
双方の親から、100万ずつせしめれば、かなり、
豪華な結婚式&新婚旅行が可能だ。
妹の陽子は、「お姉ちゃん、新居にもお金がかかるのよ」と言うが、
そんなものはどうでもいいのだ。
黒人だって、ハーレムに住みながら、キャデラックに乗ったり
するじゃないか?
新居は、直樹のボロマンションで、全然、構わない。
結婚後、「お近くにお寄りの節は・・・」と案内を出したって、
本当にやって来る奴などいないだろう。
女は、結婚式にすべてを賭けるのだよ。
西新宿のパークハイアットか六本木のグランドハイアットか
汐留のコンラッドなんかいいんじゃないか?
直樹が、隣で、ひとつ、あくびをした。